‘役立つ医学情報NO.3’ カテゴリー
NO.3
◆5年生存率20%アップを…がん対策本部、月内にも 厚生労働省は15日、日本人の死因第1位であるがんの対策を強化するため、 尾辻厚労相を本部長とする「がん対策本部」を今月中にも設置する方針を固めた。
欧米に比べて劣る医療水準や治療成績に危機感を強め、最優先課題の一つとして 位置付けた。
これまで縦割りで進めてきた対策を一本化するほか、患者の視点を政策に取り込む 仕組みや情報を提供するシステムの構築、地域格差解消などに取り組み、 政府目標である「5年生存率の20%改善」の実現を目指す。
がん対策はこれまで、主管局の同省健康局が「生活習慣病」として扱うほか、 医政局が診療指針の作成を主導、医薬食品局が抗がん剤を承認するなど部局ごとの 対応だった。
こうした中、指針で推奨された抗がん剤の多くが未承認だったり、指針に基づく治療を 保険診療で行った病院が保険局の指導を受けたりと、チグハグな対応が目立っていた。
同省は、例えば乳がんでは、欧米で90年代から死亡率が低下しているのに対し、 日本では90年の9・4%が2002年には14・9%に上昇するなど、 改善が見られないがんが多数あることを問題視。
「現態勢では国民の関心と必要性の高さに釣り合わない。 行政的な対応の優先度を上げる必要がある」(尾辻厚労相)と判断した。
対策本部は、がん医療にかかわる省内各局の局長、審議官らを主要メンバーとし、 発症予防から終末期ケアの充実まで、一貫性のある施策を推進する。
さらに、患者や専門家の意見を政策に取り入れる仕組みの創設も検討する。
「抗がん剤治療(化学療法)のリスク管理」
国立がんセンター中央病院
抗がん剤で期待できるものから、効果がないものまで、四つの郡に分けて 考えることができます。
◇ 化学療法の効果に関する4つの分類。
A郡 | ■治癒が期待できるもの。
急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(中・高悪性度)、慢性骨髄性白血病、精巣腫瘍、絨毛がんなどで、完全治癒が期待できる疾患です。 |
---|---|
B郡 | ■延命が期待できるもの。
乳がん、卵巣がん、小細胞肺がん、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(低悪性度)、骨肉腫、前立腺がんなどはがん薬物療法の有効性はあるが、治癒をもたらすことは難しいものがこの群に入ります。 |
C郡 | ■症状の緩和が期待でき、ある程度の延命は得られるが大きなインパクトは無いもの。
軟部組織腫瘍、頭頸部がん、食道がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん、胃がん、大腸がん、膀胱がんなどで、この群には頻度が高い病気がおおいのですが、単独では治癒が得られず、抗がん剤治療は治癒ではなく延命を目標としたものとなります。 このところは患者さんによく説明して理解してもらっておくことが重要です。 |
D郡 | ■効果の期待が少ないもの。
悪性黒色腫、膵臓がん、肝臓がん、脳腫瘍、腎がん、甲状腺がんなどがあります。 これらはほとんど効果が無く、治療を行っている先生方からは「これでも結構頑張っている」とご指摘を受けますが、十分な成績ではありません。 がんセンターではこれらの疾患の治療は効果があまりないという理解のうえでやることもありますが、現状はきびしく制限がかかります。 |
タミフル、化学的製造法を開発…スイス社と話し合いへ
インフルエンザの特効薬タミフルを植物原料を使わず科学的に製造する方法を 東大大学院薬学系研究科の柴崎正勝教授らのグループが開発した。
世界で需要が急増している抗ウイルス薬の安定生産を可能にする技術として 注目されそうだ。
タミフルは、スイスの製薬大手ロシュが独占的に製造している。
中国料理に使われる植物トウシキミの果実「八角」を原料に、 その成分である シキミ酸から複雑な工程を経て生産される。
新型インフルエンザにも効くと予想されるため、各国が備蓄を進めているが、
慢性的に品不足状態にあるうえに、天候不順だと原料の確保が難しくなる。
柴崎教授らは、石油から生成される安価な化学物質 「1、4―シクロヘキサジエン」 を原料に、シキミ酸なしでタミフルを作ることに成功した。
反応を促進させるため、野依良治博士の ノーベル賞受賞業績でもある「不斉触媒」 という技術を用いた。
柴崎教授はこの分野の第一人者で、日本が世界をリードしている。
タミフルに耐性を持つウイルスが出現した場合も、 この製造法を応用すれば、 新薬開発につながる可能性があるという。
東大は大学所有の知的財産として23日、この製造法を特許出願したが、 タミフルの製造販売権を押さえているロシュの許可なしには生産できない。
柴崎教授は「ロシュと話し合い、実用化研究を進めることになるだろう」と話している。